金利上昇で注目 変動、固定のミックスプランのメリット、デメリット
住宅ローンの金利上昇でミックスプランに注目が集まっています。変動金利、固定金利ではどちらを選ぶべきかを悩む人は多いです。「当面の金利は低いが、金利上昇リスクがある変動金利」と、「金利は高いが返済終了までの金利は確定している固定金利」。それぞれにメリット、デメリットがあり判断に迷うところです。両者のいいところを取ったのがミックスプラン。今回はミックスプランについて解説していきます。
ミックスプランとは
「ミックスプラン」とは同じ銀行で金利種類や借入期間などを変えた複数の住宅ローンを組み合わせて借りるものです。一般的には「変動金利」と「固定金利」をセットで借りることが多いです。
※「10年固定」と「全期間固定」等でも可能ですが、一般的には「変動」+「全期間固定」が多いです。
組み合わせる額は自由に設定できるので、たとえば4,000万円の住宅ローンを借りるとして、変動金利、固定金利を2,000万円ずつ借りたり、変動を3,000万円、固定を1,000万円としたり、変動1,000万円、固定3,000万円とするなど、色々な方法が考えられます。固定金利の借入期間を35年で借りて、変動金利は20年で借りるといったこともできます。
なお、組み合わせる金額の比率については制約のある銀行もあります。また変動と全期間固定のミックスを希望していても、全期間固定金利商品を用意していない銀行も多いです。事前に確認することが必要ですし、ミックスプランを売りにしている銀行を中心に検討するとよいでしょう。
ミックスプランのメリット
ミックスプランのメリットは、変動金利と固定金利、それぞれのメリットを受けられる点にあります。
変動金利には金利が低い(つまり、毎月返済額を安くできる)というメリットがありますが、一方で将来、金利が上がった時に返済額が増えてしまうかもしれないというデメリットがあります。
全期間固定金利には、金利上昇リスクはないというメリットはあるものの、変動に比べて金利は高くなってしまうというデメリットがあります。 変動と固定をミックスさせることで、両者のいいところ取りができます。金利上昇リスクを小さくでき、毎月返済額も抑えることができる可能性があります。変動と固定の割合を自分で選ぶことで、金利上昇リスクをコントロールできる点がミックスプランのメリットでしょう。
ミックスプランにはどんな効果がある?
ここでは4,000万円、借入期間35年、元利均等返済の場合を考えます。変動金利は0.375%、全期間固定金利を1.690%とします(2023年3月の某A銀行の金利)。
この金利の場合、毎月返済額は変動の場合だと101,639円になり、全期間固定だと126,230円になります。総返済額は変動だと4,269万円(金利が35年ずっと変わらない場合)、全期間固定だと5,302万円となります。

ただし金利が上がった場合、変動金利は返済額が増えてしまいます。ここでは仮に5年経過後に金利が今より2%上がり、返済終了までその金利が続くと仮定します(ちょっと極端な例ですが)。そうすると変動金利の毎月返済額は6年目から134,481円となり総返済額は5,451万円となります。

ここで、変動金利と全期間固定金利を2,000万円ずつミックスにした場合を考えてみましょう。毎月返済額は合計で113,934円となり、総返済額は4,785万円になります。変動だけだった場合と比べると返済額は増えてしまいます。しかし、金利が上昇した場合には、毎月返済額は130,355円、総返済額は5,376万円になります。変動だけだった場合と比べると返済額の上昇はやや抑えることができます。

毎月返済額と総返済額を変動、ミックス、全期間固定で比較してグラフにしたのが次の図です。


グラフからも、ミックスプランでは、変動よりも金利上昇リスクを抑え、全期間固定よりも返済額を少なくできていることが読み取れるのではないかと思います。
グラフに幅がありますが、金利が全く上がらない場合はグラフの幅の一番下の線になります。一番上の線に当たるところは、5年経過後に金利が2%上がって、借入期間の最後まで上がったままの金利が続くという仮定での返済額になります。金利の上昇幅が小さくなったり、上昇している期間がもっと短くなったりすれば、このグラフの幅の中のどこかに返済額が落ち着くということを意味します。
ミックスプランの最適な比率は?
上の例のミックスプランでは、変動と固定を半分ずつ(50:50)で借りる前提で計算しました。多くの銀行ではこの比率は自由に設定できます。そこで、ここでは変動と固定の比率を75:25(変動を多め)にした場合、50:50(半分ずつ)にした場合、25:75(全期間固定を多め)にした場合の3つで、どれくらい返済額と金利上昇リスクが変わってくるのかを検証します。
毎月返済額を比較したのが次のグラフ。たとえば金利が上がっても毎月返済額を13万円以下にしたいと考えるなら、変動金利の割合を50%以下にするとよいということが読み取れます。

総返済額の比較をしたのが次のグラフです。50:50の場合、金利上昇時に600万円程度返済額が増えてしまう可能性があります。25:75なら金利上昇の返済額のブレは300万円程度に収まることが読み取れます。

毎月返済額、総返済額、両方のグラフから読み取れることですが、全期間固定金利の割合を高くしても、あまり金利上昇リスク回避につながらない、ということも分かります。これは、2023年3月現在、変動に比べて全期間固定の金利が高くなっていて、変動と全期間固定の金利差が大きいことが影響しています。
ミックスプランの注意点
ミックスプランを利用する上での注意点の1つ目は、ミックスプランを使える銀行は必ずしも多くないという点です。また、変動と全期間のミックスを考えていても、そもそも全期間固定金利の商品を用意していない銀行も多いです。
ミックスプランを利用する上での注意点の2つ目は、融資手数料が高くなる場合があるという点です。ミックスにする場合でも同じ手数料になる銀行も多いですが、中にはミックスの場合に手数料が追加になる、という銀行もあります。
ミックスプランを利用する上での注意点の3つ目は、ミックス用に安い金利を用意している場合もあるという点。各銀行のホームページで手数料体系や金利については確認するようにしましょう。
まとめ:今後ミックスプランが増える
2023年になって全期間固定金利は高くなりました。変動金利は2022年と変わらずに低いままですが、今まで以上に金利上昇懸念が出てきている現状です。変動金利の安さと全期間固定金利の安心さを組み合わせたミックスプランはますます注目を集めるでしょう。
一方で、変動と全期間固定の差が大きくなっている2023年3月現在ではミックスプランの効果が予想していたほどのメリットが出ない場合もあります。住宅ローンを検討している人は金利上昇リスクやミックスプランについてもきちんと勉強し、数値で確かめることをお勧めします。
