住宅ローン借り換え注意点3:金利上昇リスクは必ずチェック

  1. 住宅ローン借り換え注意点1:住宅ローン金利ランキングの落とし穴
  2. 住宅ローン借り換え注意点2:金利優遇条件に注意
  3. 住宅ローン借り換え注意点3:金利上昇リスクは必ずチェック <<本記事>>

マイナス金利導入後、弊社でも住宅ローン借り換え相談が増えています。住宅ローンの借り換えではできるだけ低い金利にしようと、変動金利や5年固定、10年固定等、金利上昇リスクのある種類を選ぶ人は多いのですが、住宅ローンのプロからみて金利上昇リスクを取るべきでない人が金利上昇リスクを取っている場合も結構あります。借り換え時には家計の状況等をチェックし、金利上昇リスクを取るべきでない場合には全期間固定金利等に借り換えるという考え方もできます。

住宅ローン借り換えの注意点:金利上昇リスクを取ってもよい家計なのか

住宅ローンの借り換えで注意すべき点の1つに、金利上昇リスクをきちんと考えなければならない、という点があります。借り換えの際に変動金利や5年固定、10年固定タイプなど金利が固定される期間が短いものを選ぶ場合には金利が上昇して返済額が増えてしまうという危険性があります(逆にフラット35等の全期間固定金利を選んでいる場合、金利上昇リスクは回避できているので金利上昇リスクは問題ありません)。

2016年11月時点で楽天銀行の変動金利は0.507%。少し前の変動金利(大手都市銀行の変動金利)は1.275%や1.475%という時代もありました。かつて変動金利で借りたものを、今、新たに低い金利の変動金利タイプへ借り換えれば、返済額を小さくすることができます。

例えば6年3か月前に、当初の借入2,800万円、金利1.275%、35年返済(元利均等返済)で借りたものを今、楽天銀行の変動金利0.507%に借り換える場合を考えます。借り換え前と後では以下のように返済額が小さくなります。

金利 毎月返済額 元利総支払額(諸費用含む)
借り換え前 大手都市銀行 変動金利 1.275% 82,344円 2,841万円
借り換え後 楽天銀行 変動金利 0.507% 76,019円 2,650万円

※今後金利がずっと同じと仮定した場合の値

このように低金利の今、変動金利から変動金利に借り換えることでメリットが出る場合が多い、というのは確かに間違いないのですが、しかし変動金利には金利が上昇して返済額が増えてしまう危険性があります。借り換えをして5年経過後、大手都市銀行の店頭金利が4%に上がると仮定します(この4%というのは過去30年の平均値がおおよそ4%だということから置いた数値です)。2016年11月時点、大手都市銀行の店頭金利は2.475%ですので、今から1.525%金利が上がったということなります。楽天銀行の変動金利0.507%に1.525%を足すと、2.032%になっているはずです。

金利 毎月返済額 元利総支払額(諸費用含む)
楽天銀行 金利上昇せず 0.507% 76,019円 2,650万円
楽天銀行 金利上昇 2.032% 90,328円 3,058万円

※5年経過後から返済終了まで各々の金利がずっと続くと仮定した場合の数値です。

この場合毎月返済額は90,328円まで上がってしまいます。毎月返済額が9万円を超えますが、それでも毎月の返済は大丈夫でしょうか? 例えば現時点で毎月の貯蓄が10万円できているという家庭であれば、毎月返済額が9万円に増えてしまっても大丈夫と言えるでしょう。逆に毎月の貯蓄が全然できていない、という場合には9万円に増えてしまうとかなり家計は厳しくなるはずです。このように金利上昇に耐えられる家計なのかどうかをきちんと考えておく必要があると言えるのです。

5年後に金利が本当にそこまで上がるのか、と思う人もいるでしょう。確率は高くないかもしれませんが、確率の問題ととらえるのではなく、万が一のリスクを考えることが大切なのです。この辺りは家計によって異なってきますので、我々のような住宅ローンのプロに診断してもらうのがよいと思います。

金利を固定し、金利上昇リスクを回避する借り換えも

上で見たように、変動金利で借りている人は変動金利に借り換える、ということをよくやりますが、変動金利以外の金利タイプに借り換えることも可能です。例えば、同じ楽天銀行でフラット35に借り換える例を考えてみます。フラット35というのは全期間固定金利の一種です。つまり、契約時点の金利が返済終了までずっと続きます。2016年11月現在のフラット35の金利は1.03%なので返済額は以下のように、81,739円となります。楽天銀行の変動金利より返済額は増えてしまいますが、今までの返済額よりはほんの少しですが小さくなっています。諸費用を含めた、元利総支払額では2,950万円と少し増えてしまいます(現在の総支払額より多くなってしまうのはフラット35が団信保険料を別途払う必要がありそれを加味した数値であるため)。

金利 毎月返済額 元利総支払額(諸費用含む)
借り換え案2: 楽天銀行 フラット35 1.03% 81,739円 2,950万円

しかし、変動金利の金利が上がった場合と比べると毎月返済額も元利総支払額も小さくなっていることがわかります。このように、金利が低い今、金利上昇リスクを避けることを第一目的に、借り換えを行うということもできるのです。

■まとめ
住宅ローンの借り換え相談を行っていると、ここ数年金利が上がったことがないためなのか、金利上昇リスクに鈍感な人が多いように感じます。そこは注意していただきたい点の1つです。

金利が上昇して毎月返済額が上がっても問題ないという家計なら変動金利(や5年固定、10年固定)を選択することは問題ないでしょう。しかし、もし金利が上昇すると返済が厳しくなってしまう場合には、金利上昇リスクを取るべきではない、と言え、金利の低い今のタイミングで固定金利に借り換えるという選択をすべきと言えます。住宅ローンの借り換えの際には金利が上昇しても耐えられる家計なのかどうかのチェックをしておくことをお勧めします。

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