住宅ローン借り換え注意点2:金利優遇条件に注意
- 住宅ローン借り換え注意点1:住宅ローン金利ランキングの落とし穴
- 住宅ローン借り換え注意点2:金利優遇条件に注意 <<本記事>>
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マイナス金利導入後、弊社でも住宅ローン借り換え相談が増えています。住宅ローンの借り換えでは金融機関の選択で大きな差が出ますが、金利優遇条件の違いをチェックしている人は多くありません。住宅ローンランキングサイトやクチコミサイトでは金利優遇条件について正しく解説しているものは少ないため、ここでは取り上げて解説します。
店頭金利と適用金利
まず理解しておくべき基礎知識として、住宅ローンの金利には「店頭金利」と「適用金利」の2種類があることを覚えておきましょう。「店頭金利」はいわば「定価」の金利。「適用金利」は「値引き後の金利」です。店頭金利から優遇をして(値引きをして)、実際に使われる金利が「適用金利」という関係です。
例えば大手都市銀行の変動金利(2016年11月現在)は0.625%です。これは「店頭金利」2.475%から1.85%優遇(値引き)をして0.625%まで金利を下げている、ということなのです。
全期間優遇と当初期間優遇
金利引下げ(金利優遇)には2種類のやり方があります。1つ目は引下幅がずっと変わらないタイプ(全期間優遇)、もう1つは当初何年か優遇幅が大きく、その後優遇幅が小さくなるようなタイプ(当初期間優遇)です。
例えば、住信SBIネット銀行の10年固定を例に考えます。全期間優遇の場合の金利は0.9%となります。これは基準金利2.2%から1.3%の金利引下げを受けた結果です。10年経過後の金利は分かりませんが、この1.3%という金利引下げ幅はずっとキープされます。10年経過後変動金利を選ぶ場合、金利が今と同じでれば変動金利の基準金利は2.775%なので、2.775%から1.3%を引いた1.475%が提供金利となります。
一方住信SBIネット銀行10年固定の当初期間優遇の場合の金利は0.5%となり、当初期間優遇の場合より金利は低くなっています。しかし当初優遇期間が終わってしまう10年経過後は、金利の引下げ幅は0.7%まで縮小します。その時の変動金利の基準金利が2.775%だとすればそこから0.7%を引いた2.075%が適用金利となるわけです。
住宅ローン借り換えの注意点:金利優遇条件の違い
上でみた金利引下げの違いというのが住宅ローン借り換えの際の銀行の比較選択には必須です。ここでは借り換え後に5年固定金利を選ぶ場合を例にとって考えてみましょう。5年経過後、変動金利を選ぶと仮定しますがその際の金利は現在と変わっていないものとします。金利が低いことで有名な住信SBIネット銀行と楽天銀行を比較してみます。
まず住信SBIネット銀行を見てみます。住信SBIネット銀行で当初期間優遇タイプを選ぶと仮定すると、5年固定金利は0.44%です。これは基準金利2.45%から2.01%の金利引下げをした後の値です。この金利が使われるのは当初5年間のみです。5年経過後から引下げ幅は1.8%と少し小さくなり、変動金利の基準金利が今と同じ2.775%だとすると1.8%を引いた0.975%という金利になるのです(金利は2016年11月現在)。
同じ条件で楽天銀行を見てみます。5年固定金利は0.789%ですが、0.789%というのは基準金利1.439%から0.65%の金利引下げをした後の金利です。楽天銀行は当初期間優遇という考え方がないため(全期間優遇タイプのみのため)、5年経過後の引下げ幅は0.65%で同じです。5年経過後に変動金利を選択した際の基準金利が今と同じ1.157%だとすると、そこから0.65%を引いた0.507%ということになります。
3,000万円、30年返済(元利均等返済)の住宅ローンを組む場合の金利と返済額まとめると以下のようになります。
当初5年 | 残り25年 | 総返済額 | |||
金利 | 毎月返済額 | 金利 | 毎月返済額 | ||
住信SBI銀行
当初期間優遇 |
0.44% | 77,082円 | 0.975% | 83,301円 | 3,461万円 |
楽天銀行
全期間優遇 |
0.789% | 81,767円 | 0.507% | 78,481円 | 3,361万円 |
当初5年の金利だけを比較すると、0.44%の住信SBIネット銀行の当初期間優遇の方が有利に見えますが、30年トータルで考えると楽天銀行の全期間優遇の方が有利という結果になりました。このように見た目の金利の低さで考えるのではなく金利優遇の条件を確認し、トータルの返済額を考える姿勢が大事なのです。
なお住信SBIネット銀行にも全期間優遇タイプの金利引下げもありますし、また、こちらでも見たように、住宅ローンの比較検討では手数料等の諸費用の比較も必須です。常に住信SBIより楽天の方が有利になると言うことではなく、あくまで考え方を伝えるための例です。
まとめ
住宅ローンの借り換え相談を受けていて、金利優遇の条件まで正確に理解している人は少ないです。住宅ローンの借り換えでは5年固定や10年固定を選ぶ人も多いですが、見た目の金利の低さだけでなく金利の優遇がいつまで続き、終わった後はどういう金利計算をするのかを考える癖をつける必要があります。住宅ローン借り換え成功のためには優遇条件の確認は必須です。住宅ローンの借り換えでまず注意すべき点としては、こちらでもまとめた金利だけで比較しない、という点と、今回解説した、優遇の条件の確認、次回解説する予定の金利上昇リスクも考えるという点が大事なポイントです。
