日銀の政策変更、事実上の利上げ、で住宅ローン金利は上昇?

2022年12月、日銀が金融政策の変更を発表、事実の利上げとも言われます。その結果、長期金利が上がり、住宅ローンの全期間固定や10年固定等は来月から金利が上がることが予想されます。一方、変動金利への影響は小さいと考えられます。今回は日銀の長短金利政策(イールドカーブコントロール)の変更と住宅ローンに与える影響を解説します。

日銀の政策変更の内容は?

日銀は現在、長短金利操作(イールドカーブコントロール)を行っていますが、これまでは、長期金利を「プラスマイナス0.25%程度」の変動幅で推移するよう調節するとしてきた政策を「プラスマイナス0.5%程度」まで拡大するとしました。事実の利上げとも言われます。

誤解を恐れずに大雑把にまとめると、長期金利の上限は0.25%程度になるよう日銀はコントロールしてきたが、長期金利は0.5%程度まで上がることは許す、ということです。

この政策変更を受け、日本の10年国債利回り(長期金利の指標となるもの)は、従来は0.250%程度だったものが、0.450%程度まで上昇しました(2022年12月22日の時点)。

日銀政策変更の住宅ローンへの影響

住宅ローン金利への影響ですが、影響が大きいのは10年固定金利や20年固定金利、フラット35等の全期間固定金利です。日本の10年国債利回りは、0.250%→0450%へ約0.200%上昇(2022年12月22日の時点)していることを考えると、これらの住宅ローン金利も0.2%程度は上昇する可能性があると思われます。

一方、変動金利には直接的には影響はないと考えられます。今回の政策変更は「長期金利」に関するものだけで、「短期金利」には影響はなく、短期金利と連動する変動金利も影響を受けないと考えるのが自然です。

日銀の政策と住宅ローン金利への影響については下記コラムも参考にしてください。

住宅ローンの変動金利は上がるのか? 金利上昇の2パターン

2023年1月の金利予想

まず、上で述べたように、変動金利には大きな動きはないと予想します。動きがあるのは、10年固定や20年固定、全期間固定でしょう。

フラット35の2022年12月の金利は1.65%だったので、+0.2%すると1.85%程度。マイナス金利政策導入前のフラット35は1.80%台だったので、2023年1月の金利はそれくらいになるかもしれません。12月に金利を大きく上げてきたので、1月の金利上昇幅は0.20%未満になる可能性もあります。

10年固定の金利はたとえばみずほ銀行では、2022年12月は1.1%でしたが、これに+0.2%すると1.3%という計算になります。みずほ銀行の変動金利は0.375%で、おそらく来月も変化なしと考えられるので、変動金利と10年固定金利の差は1%近くになると思われます。

今後の住宅ローン戦略

日銀の黒田総裁の任期もあと少し。後任が誰になるかによって金利がさらに上昇する可能性もあります。ただし当面は、金利上昇は「長期金利」のみになるはずです。短期金利は2009年くらいから10年以上も変化がなく、それと連動する変動金利も今後も当面は変化しないと考えられます。変動金利は本来、金利が変動するのですが、当面の間に限って言えば、変動金利の金利上昇の可能性は少ないのではないかと思います。

※原則論でいうと、こういった予測に基づいて、住宅ローンの金利種類を決めるのは危険な考え方です。家計が金利上昇リスクを取れるのかどうかで、金利種類は決めてほしいと思います。

全期間固定金利や10年固定等は、住宅購入の計画を開始してから実際に購入するまでの間に金利が高くなることも考えられます。たとえば、注文住宅の建築時には、住宅ローンの申し込みから、建物が完成して融資実行(=金利決定)されるまでの期間は半年から1年程度はかかります。 その間に全期間固定や10年固定は金利がさらに上がっている可能性もあります。これらのローンを選ぶ際は、分割実行可能な銀行を選ぶ(土地購入時や着工金支払い時の融資は近々行えるので、その金利は相対的に低くできる)ことで少しはリスクを和らげるという手もあります。

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