住宅ローン借り換え審査に通らないで落ちるのはどんな人?

住宅ローン借り換えの審査に通らないで落ちてしまう人は一定数います。借り換えの審査を受けるということは、一度は住宅ローンを組んでいる人、つまり、一度は審査に通った優良な人なので、本来は審査に有利なはず。だからこそ銀行も借り換え顧客の獲得に積極的です。

それでも落ちてしまうのは借り換えならではの難しさがあるからです。今回は住宅ローン借り換え審査に通らないで落ちる人の特徴、失敗しないためのポイントをまとめます。

住宅ローン借り換え審査に通らない5つのパターン

住宅ローン借り換え審査に通らない人にはいくつかのパターンがあります。主なパターンは以下の5つです。

  1. 物件が古くなり、担保価値が下がっている
  2. 歳を取ったことにより、健康状態が悪化し、団信に加入できない
  3. 年収が下がる、起業するなどしている
  4. 転職直後で銀行の勤続年数の規定を満たさない
  5. 住宅ローンを借りた後、車のローンや、不動産投資の借入等を増やしてしまった

以下、それぞれのパターンを詳しく解説していきます。

物件が古く、担保価値が下がり、借り換え審査に通らない

住宅ローン審査では物件の担保価値も評価の対象となります。土地に関しては年数を経ても価値が大きく下がるということはありませんが、建物の価値に関しては年数を経るごとに評価はどんどん低くなっていきます。

住宅を購入して数年であればそこまで大きく価値が目減りすることはありませんが、10年以上経過しているケースや、元々中古物件を購入しているケースなどでは注意をした方がよいかもしれません。

ただし、物件が古いだけで即、住宅ローン借り換え審査が全く通らないというのは少ないような気がします。むしろ、審査は通るが、希望額満額は貸してくれない、とか、審査は通るが保証会社への保証料が高くなる、というような結果になることが多いような気がします。

希望額満額は貸してくれない、というのはたとえば、希望額は3,000万円だが物件の担保評価を考えると2,700万円しかOKが出なかったというようなケースです。300万円貯金を取り崩せば借り換えができるわけですが、そこまでして借り換えをすべきか、慎重に判断する必要があります。また、他の銀行であれば希望額満額貸してくれる場合もあります。特に物件が古い場合には複数の銀行で審査を受けてみることをお勧めします。事前審査(仮審査)であれば手続きもそれほど煩雑ではないので気軽に受けてみましょう。

審査は通るが保証会社への保証料が高くなる、というのも私がコンサルをしている中ではよくあるパターンです。たとえば、本来、保証料は50万円程度のはずなのだが、150万円必要になる、というようなことです。最近では保証料を払わないで済む、融資手数料型も増えているので、違うタイプの銀行の審査を受けてみる手もあります。

年を取り、健康状態が悪化し団信に入れず、借り換え審査に通らない

住宅ローンを借りる際は、団信への加入が原則として必須ですが、住宅ローンを最初に借りた時と比べて、健康状態が悪化していて団信に入れず、借り換えの審査に通らないことがあります。

健康状態に自信がない場合、借り換え先に、ワイド団信のある銀行を選ぶことで解決できる場合もあります。ワイド団信は、健康状態に不安がある人でも入れる団信ですが、金利は通常の団信よりも0.3%程度高くなることが一般的。その金利でも借り換えのメリットがあるかどうかを検証する必要があります。

フラット35では団信加入は必要ありませんが、団信を外してまで借り換えをするべきではないでしょう。

年収が下がる、起業する等して、借り換え審査に通らない

最初に住宅ローンを組んだ時より、年収が下がった場合、借り換えの審査に通らない可能性もあります。銀行は年収と借入のバランスを審査します。具体的には「住宅ローンの年間返済額÷年収」の値(返済比率、返済負担率などと言われます)が審査の対象となり、これがたとえば35%以下ならOK、それ以上は審査に通らない、というような判断をします。返済比率、(返済負担率)の基準は私たちには公開されていませんが、フラット35では年収400万円以上なら返済負担率35%以内、400万円未満なら返済負担率30%以内という基準が公開されています。

フラット35の返済負担率
フラット35の返済負担率

なお返済負担率計算における「住宅ローンの年間返済額」は、金利、借入期間、ローン金額の3つから計算できますが、金利については「審査金利」が各銀行とも定められており、通常の金利よりも高いというのが一般的です。たとえば、みずほ銀行の変動金利は0.375%ですが、審査金利は0.375%ではなく、3%前後になっているはずです(審査金利は私たちには公開されていません)。

フラット35では審査金利はもう少し低くなり、その時の適用金利になる、と言われています。2022年現在のフラット35の金利は、ARUHI(アルヒ)のフラット35買取型などでは1.48%ですが、この1.48%というのが審査金利になるということです。

つまり、審査金利が3%前後の一般的な銀行より、1%台になるフラット35の方が、同じ年収でも借りられる金額は大きくなるということです。年収面で審査に不安のある人はフラット35が選択肢になるかもしれません。

また「住宅ローンの年間返済額」と書きましたが厳密には、住宅ローン以外の借入の年間返済額も含みます。この点については別途まとめます。

起業した人も審査は通りにくくなります。個人事業主であっても法人経営者でもあっても、会社員等に比べて、年収の安定性に欠けるとみられるからです。ただしフラット35は、個人事業主や法人経営者の場合でも比較的、審査が通りやすいです。それでもクリアすべきポイントはたくさんあるので、簡単ではないのですが、気になる方はフラット35をチェックしてみるようにしましょう。または、私のような住宅ローンコンサルティング専門のFP会社等に相談してみるのもよいでしょう。

こちらのコラムでは、フラット35の特徴、メリット・デメリットについてまとめています。

転職直後で勤続年数の観点で借り換え審査に通らない

各銀行の審査基準には、勤続年数の基準もあります。勤続年数が3年以上必要という銀行や3年は要らないが1年以上は必要というような銀行が多いです。借り換えをしたいタイミングで転職直後だとこのような審査基準の銀行では借り換え審査に通らないでしょう。

銀行によっては勤続年数が6カ月あればよいというようなところもありますし、原則は1年必要だがそれ未満でも他の審査項目と合わせて審査可能というようなところもあります。フラット35は1カ月あればOKなので、転職直後にどうしても借り換えをしたいという場合はフラット35を中心に検討してみるとよいでしょう。

不動産投資の借入等を増やしたため、借り換え審査に通らない

住宅ローンの審査では、「住宅ローンの年間返済額÷年収」(返済負担率、返済比率)の値が審査の対象となるというのは上で書きました。このうち「住宅ローンの年間返済額」の部分は、厳密には住宅ローン以外の借入に関する年間返済額も含めて計算します。

たとえば年収400万円の人がいて、借り換え後の住宅ローン年間返済額が120万円だったとします。審査では120÷400=30%という数値をチェックし、これが一定数値以内ならOK(たとえば35%以内ならOK)という審査が行われます。

この人に、たとえば車のローンがあり、その年間返済額が30万円だったとすれば、年間返済額の合計は150万円(住宅ローン120万円+車30万円)となります。150÷400=37.5%となってしまいます。仮に「年間返済額÷年収」が35%以内ならOKという審査基準の銀行であった場合、自動車ローンがなければ120÷400=30%で合格ですが、車のローンがあると150÷400=37.5%となり、審査に落ちてしまうことになります。 住宅購入後、車をローンで購入したり、投資用不動産をローンで購入していたりすると、借り換えの審査で落ちてしまう場合もあります。

借り換え審査に通らない5つのパターンと失敗しないポイント

今回は住宅ローン借り換え審査に通らない人の5つのパターンを解説しました。最後に、それぞれのパターンごとに、失敗しないための対策案も合わせてまとめておきます。

物件が古くなり、担保価値が下がったことで希望額の融資を受けられなかったり、保証料が高くなってしまったりする。

→審査は複数申し込んで希望額満額を融資してくれるところを探す。

歳を取ったことにより、健康状態が悪化し、団信に加入できない。

→ワイド団信なら加入できる場合もあるが金利が0.3%程度高くなるので、それでも借り換えでメリットが出るか検証する。

年収が下がる、起業するなどしている。

→フラット35は「年間返済額÷年収」の観点からは審査は甘くなる。個人事業主や法人経営者も通常の銀行よりはフラット35の方が通りやすくなる。フラット35への借り換えでメリットが出るかを検証する。

転職直後で銀行の勤続年数の規定を満たさない。

→フラット35など、勤続年数についての審査基準が甘い銀行を探す。

住宅ローンを借りた後、車のローンや、不動産投資の借入等を増やしてしまった。

→車のローン等を含めて「年間返済額÷年収」の審査基準をクリアしているかどうかを検証、厳しそうな場合、全額返済できそうな借入は全額返してしまうことはできないか考える。

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